太陽光発電のこと

櫛田孝司

  最近、地球温暖化に関するニュースを聞かない日が無いくらいに、この問題は人々の関心を集めている。しかし、日本が温暖化防止対策の進捗状況に関し世界の劣等国であることは意外に知られていない。世界銀行の評価によると、この点でわが国は、世界70カ国中で61位と最低レベルにあり、先進国中では最下位であると言う。省エネ技術において日本は世界のトップを走っていると言われながら、これは何としたことであろうか。
 1997年、日本は世界の国々をまとめる努力をして、温暖化防止策の国際的な取り組みの第一歩とも言える京都議定書を取りまとめた。その内容の大きなポイントは、2008年から2012年までの間の温室効果ガス排出量の削減割合を各国に何%と数値化して義務付けるというものである。日本はこれを批准し、排出量を1990年のそれに比べて6%削減することを約束した。しかし、わが国の場合何か危機感に欠け、2005年には減らすどころか排出量は12%も増加し、特に家庭からの排出量は36.7%も増加した。結局は約束が果たせないので、排出枠をロシアなどから大金(2兆円と言われている)で買い取って辻褄を合わせるという噂だったが、最近、実際にハンガリーやロシアとの交渉が始まった。この方法は、国際的に容認はされているものの、温室効果ガスの削減には何ら寄与するものではなく、税金を無駄遣いして格好だけ付けると言う愚策である。洞爺湖サミットの議長国であるわが国としては恥ずかしい限りではないか。
 そんな想いから、国民の一人として何かできることはないかと考えてみた。塩の街として知られる赤穂は、あふれるように降り注ぐ太陽に恵まれている。これを活用しない手はない。それどころか資源の無いわが国にとって太陽こそは今後ずっと頼りにできる唯一のエネルギー源ではないだろうか。個人として温暖化防止に貢献するには、省エネ、森林育成、太陽熱の利用などいろいろな方法があるが、太陽光発電が最も簡単で効果的である。設置後に手間が掛からないばかりでなく、余った電力は買い取ってもらえ、その額を毎日見ることができるため、節電・省エネの動機付けとしてこの上ないものである。おまけに、光熱費は今後上昇の見込みである。
 しかし、実際には、太陽光発電パネルを屋根に付けた家は町でほとんど見かけない。そこで、清水浩著「温暖化防止のために・一科学者からアル・ゴア氏への提言」(ランダムハウス講談社)を読んでみると、太陽光発電こそは、わが国が世界のトップを切って育てた技術であり、今後の環境問題を解決するカギになるものであるらしいこと、しかしまたそれは産業構造の変革を伴うために業界などから反対する圧力が掛かりやすく、わが国ではあまり盛んになっていないことが理解できた。そうであるならば、地球温暖化を阻止するために、多くの市民がこれを広めるように努力することが必要であろう。特に、太陽と環境に恵まれた赤穂が、率先してこれを推進すべきだと考えるに至った。そこで、それにはまず自分の家で実行することだと約200万円を投資して3kWの太陽光発電装置を屋根に付けることにした。群馬県太田市のPal Town のように既に実施しているところもあるが、多くの家が太陽光発電装置を取り付け、地球温暖化の脅威から人類の未来を守ることに尽力した町として、赤穂を将来誇りにできるようなモデル都市にすることはできないものだろうか。もし良いアイデアをお持ちの方がおられたら、是非、お話を伺わせて頂きたいと考えている。
(2008年3月10日)

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