第八回穂愛留コンサートを終えて
立花三千男
あの軽快な調べ「パリの空の下 セーヌは流れる……」や、アダモが歌う「雪が降る」
など、私はシャンソン大好き人間ですが、まさかそのシャンソンが穂愛留第8回コンサートで
採用されるとは! 穂愛留コンサートはクラシック中心で開催されてきたから、クラシック
門外漢の私はお手伝いもできなかったが、今回は私の知己のシャンソン歌手(福原すみれ
女史)に依類したいとのお話であった。
というような次第で、歌手とピアニストの都合よい日(それが2月5日だった)が決まり、
歌ってもらう曲目を決めることからチラシやプログラムの原案作成まで、私は苦労しながら
貴重な経験をさせてもらった。思えば、神戸のカルチャーセンターで福原さんのシャンソン
レッスンにご縁を得ていなかったら、この企画は生まれず2月5日の大盛況もなかった。
つくづくご縁のありがたさを思う。
場所は市内のペンション『へるつ』、2月5日快晴、午後2時開演、定員31名のホーム
コンサート形式で挙行された。ピアニストは坂下文野さん、かの有名な「東京キューバン
ボーイズ」でもピアノ伴奏された円熟ピアニストだ。私は行きがかり上、司会進行役を
勤めた。
福原さんが歌った12曲とピアノ演奏2曲の曲名は下記の通りであるが、往年の懐かしい
名曲に、いま世界で広く歌われている数曲が加わり、ご自身のオリジナル曲も。贅沢な
プログラムとなった。シャンソン・フアンにはたまらない内容だったろうと思う。
当日の曲名リスト (歌唱・演奏順)
オープニングメドレー 巴里野郎、パリの空の下、幸福を売る男
第1部 雪が降る、小雨降る径(タンゴ)、私は−人片隅で、絆 リ・アン(オリジナル)、
星の誘惑(西アフリカの曲)、百万本のバラ、マンボN o.5 <ピアノ演奏>
第2部 バラ色の人生、鶴(ロシアの曲)、勝手にしやがれ(沢田研二の大ヒット曲)
別離、思い出のシチリア(カンツォーネ)、愛はあなたのよう
グラナダ <ピアノ演奏>
アンコール 穂愛留のうた「風」
当日は、来客は穂愛留メンバーが半数を占め、半数が市内の音楽愛好家で過去の穂愛留
コンサートの常連さんだった。そうした予備知識が私をいたく緊張させたが、まずは大過
なく終了した。
気になる当日アンケートでは「とてもよかった」が74%、過去のコンサートの中では
堂々の第二位と知った。これはひとえにお二人の歌唱力とピアノ、そのコンビネーション
によるものだろうが、お二人のさわやかでウイットに富むトークに好ましいお人柄が
現れていて、さらに福原さんの身振り手振り(特に『勝手にしやがれ』など)などが
総合判断されたものと思う。
当日の感想を私が記せばきりがないので、このあたりは当日の参加者のそれに代えたい
と思うが、最後に一つ特記したいのは、プログラム終了後に『穂愛留のうた』を歌って
もらったことだ。かねて福原さんから歌っていただけそうな感触は得ていたから、企画
段階で私はその実現を切望した。シャンソン・ライブに「穂愛留のうた」、それはないよ
の声もあったが、私は固持した。それは、種愛留が市内で或る程度知られる存在になって
きたこと、別途計画中の植樹プロジェクト絡みもあり、少し存在を自己主張させて
いただく好機と思えたからである。
ちょっと心配したが、終わってみれば杞憂であった。来客に作曲・補作者お二人を
お迎えしていたのも良かったと思う。総じて好意的な感想が多く寄せられた。「皆さんの
赤穂を思う心情がよく分かりました」とのメールも頂戴した。私個人にとっては望外の
喜びである。
参加者の感想
○コンサートからもう何日にもなりますのに、いまだにシャンソン・ライブの余韻に
浸っています。あの日、私はシャンソンの名曲を聴きながら、昔訪ねたオルセー美術館
やセーヌ川河畔での思い出が想起されました。それがいかに強烈であったかは、
その夜なかなか寝つけなかったほど、久しぶりの高揚感でした。歌手福原さんと
ピアノの坂下さんとのコンビも大変好ましく、お二人のチャーミングな人柄にも
魅せられました。惜しかったのは、これだけのライブが30名程度の規模だったこと、
もったいないと思いました。今度はぜひ盛大にやっていただきたいですね。 松井芳子
○「福原すみれ」さんの中低音の歌声に聞き惚れました!! 50年ぶりのシャンソン
ライブでしたが、当分 嵌まってしまいそうです。 北原敏夫
○シャンソンを主とした福原さん、ピアノの坂下さんの演奏には満足感“大”で
ありました。とりわけ、最後に歌われた「穂愛留のうた」には感激いたしました。
赤穂をこよなく愛する心情が綴られた詞とメロディが絶妙に合っており、すばらしい
歌だと思いました。 司馬多聞
○「雪が降る」「小雨降る径」など懐かしい曲でコンサートが始まると、半世紀以上も
若返って、学生時代の新宿や銀座を思い出し、青春の血が蘇るような思いがしました。
そのまま、シャンソンの世界にどっぷりとひたり、あっという間の約2時間の演奏会
でした。特に素晴らしかったのはアンコールで歌って頂いた「穂愛留のうた」『風』で、
歌詞の前半を語りにしたシャンソン風のアレンジも抜群で、改めてこんなに素敵な歌
だったのだと認識を新たにしました。作曲者、補作者、作詞者の方々も聞いて
おられましたが、皆さん大満足されたことだろうと思いました。また、ピアノ演奏の
「マンボNo.5」、「グラナダ」もパンチが効いたダイナミックな演奏で、とても
楽しませて頂きました。穂愛留コンサートとしては、クラシック以外は初めての試み
でしたが、大変に素晴らしい演奏会だったと心より喜んでいます。 櫛田孝司
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演奏中の福原さんと坂下さん | 演奏に聴き入る参加者の皆さん |